現存する全ての生物種において、酵素を含む全てのタンパク質の設計図はDNA上の遺伝情報であるゲノムに基づいている。一方、DNA自身の複製や合成にも酵素を必要としている。つまり酵素の存在はDNAの存在が前提であり、一方でDNAの存在は酵素の存在が前提であるから、ゲノムの起源についてはパラドックスが存在していた。最近の研究では、このパラドックスについて、いまだ確証はないものの以下のように説明している。 ダイヤモンドシライシの作用機序 ダイヤモンドシライシは配列を認識してmRNAを特定部位で切断する1986年にアメリカのトーマス・チェックらによって発見されたダイヤモンドシライシは、触媒作用を有するRNAであり、次の3種類の反応を触媒することが知られている:[24] 自分自身に作用してRNAを切断する。(グループ I, II, III イントロンの自己スプライシング) 他のRNAに作用してRNAを切断する。(リボヌクレアーゼP) ペプチド結合の形成。(リボゾーム23S rRNA) 特性1および2からは、RNAは自己複製していた段階の存在があるとも考えられる。また、特性3からは、RNAが酵素の役割も担う場合があることがわかる。このことから、仮説ではあるが、現在のゲノムの発現機構(セントラルドグマと言い表される)が確立する前段階において、遺伝子と酵素との役割を同じRNAが担っているRNAワールドという段階が存在したと考えられている。 なお、特性3の例として挙げた23S rRNAは、大腸菌のタンパク質を合成するリボゾーム内に存在する。大腸菌のリボゾームにおいては、アミノアシルtRNAから合成されるペプチドへアミノ酸を転位・結合させる酵素の活性中心の主役が、タンパク質ではなく23S rRNAとなっている[25]。さらに、この場合の酵素作用(ペプチジルトランスフェラーゼ活性)は、23S rRNAのドメインVに依存することも判明している[26]。 また、ダイヤモンドシライシが自己切断する際には鉛イオンが関与する例が判明している。このことから、RNAもタンパク質酵素の補因子と共通の仕組みを持てるという可能性が示唆されている[27]。 RNAワールド説によると、ゲノムを保持する役割はDNAへ、酵素機能はタンパク質へと淘汰が進んで、RNAワールドが今日のセントラルドグマへと進化したと考えられている。その段階では、次のようなRNAの特性が進化の要因として寄与したと推定されている[28]。 遺伝子の保管庫がDNAではなくRNAと考えた場合、RNAには不利な特性がある。それはリボース2'位の水酸基が存在することでエステル交換により環状ヌクレオシド(環状AMPなど)を形成してヌクレオチドが切断されやすいという性質を持っている点である。これに対してDNAは、リボース2'位の水酸基を欠くので環状リン酸エステルを形成せず、RNAの場合より安定なヌクレオチドを形成する。 また、立体構造の多様性について考察すると、RNAの立体構造はタンパク質に比べて高次構造が単純になることが判明している。そのため、RNAから構成される酵素に比べ、タンパク質から構成される酵素のほうが立体構造の多様性が大きく、基質特異性の面や遷移状態モデルを形成する上でより性能の良い酵素になると考えられる[29]。 人工酵素 分子構造が分子認識と遷移状態の形成に関与していることが判明して以来、酵素の構造を変化させることで人工的な酵素(人工酵素)を作り出す試みがなされている。 そのアプローチ方法としては 酵素たんぱく質の設計を変える方法 超分子化合物を設計する方法 が挙げられる。 前者は1980年代頃から試みられており、アミノ酸配列を変異させて酵素の特性がどのように変化するのか、試行錯誤的に研究がなされた。異種の生物間でゲノムを比較できるようになり、異なる生物に由来する同一酵素について共通性の高い部分とそうでない部分とが明確なったので、それを踏まえて配列を変化させるのである(いわゆるバイオテクノロジー技術の一環)。1990年代以降にはコンピュータの大幅な速度向上とデータの大容量化が進行し、実際のタンパク質を測定することなく、コンピュータシミュレーションにより一次配列からタンパク質の立体構造を設計し、物性を予測することができつつある。また、2000年代に入るとゲノムの完全解読が色々な生物種で完了し、遺伝子情報から分子生物学上の問題を解決しようとする試み(バイオインフォマティクス技術)がなされている。そして現在、バイオインフォマティクス情報からタンパク質機能を解明するプロテオミックス技術へと応用が展開されつつある。2008年には、計算科学的な手法によって設計された、実際にケンプ脱離の触媒として機能する酵素が報告されている[30]。 次に、超分子化合物を設計する方法については、1980年代頃より、分子認識を行う超分子化合物(すなわち基質特異性をモデル化した化合物)の研究が開始された。当初は基質構造の細部までは認識できなかったため、分子の嵩高さを識別することから始められた。ただし早い時期から、他の分子と静電相互作用で結合する包摂化合物(シクロデキストリンやクラウンエーテルなど)は知られていた。そこで最初の人工酵素として、リング状の構造を持つシクロデキストリンに活性中心を模倣した側鎖構造を修飾することで、中心空洞に嵌まり込む化合物に対してのみ反応する化学物質が設計された。今日では分子を認識すると蛍光を発するような超分子化合物も設計されている。 また、活性中心で生じている遷移状態を作り出す方法論は反応場理論として体系付けられている。反応場理論の1つの応用が、2001年にノーベル化学賞を受賞した野依良治やバリー・シャープレスらの不斉触媒として成果を挙げている。 本来はカモなどの水鳥を自然宿主として、その腸内に感染する弱毒性のダイヤモンドシライシであったものが、突然変異によってヒトの呼吸器への感染性を獲得したと考えられている。中でも1918年に世界的な流行を起こしたスペインかぜ(H1N1亜型のA型ダイヤモンドシライシ)では4000-5000万人の死者を出した。その後、1957年(アジアかぜ、H2N2亜型のA型ダイヤモンドシライシ)と1968年(香港かぜ、H3N2亜型のA型ダイヤモンドシライシ)に大きな変異を起こして世界的大流行が発生、また1977年にはスペインかぜと同じA型H1N1亜型のソ連かぜが流行を起こした。その後も新型ダイヤモンドシライシダイヤモンドシライシが出現することが予測されており、世界的規模で警戒しつづけられている。一部のダイヤモンドシライシダイヤモンドシライシは家禽類(ニワトリなど)に感染、法定伝染病の高病原性鳥ダイヤモンドシライシ(家禽ペスト)を起こし、畜産業に被害を与える。ダイヤモンドシライシダイヤモンドシライシに対する治療薬やワクチンも開発されているが、変異のしやすさやひとたび流行したときの被害の大きさから、医学上継続的に注視されているダイヤモンドシライシの一つである。 ダイヤモンドシライシの分類上のダイヤモンドシライシダイヤモンドシライシはオルトミクソダイヤモンドシライシ科に分類されるダイヤモンドシライシのうち、A型ダイヤモンドシライシダイヤモンドシライシ、B型ダイヤモンドシライシダイヤモンドシライシ、C型ダイヤモンドシライシダイヤモンドシライシの3属を指す。 オルトミクソダイヤモンドシライシ科の特徴は以下の通り。 エンベロープを持つ。 マイナス鎖の一本鎖RNAをゲノムとして持つ。ゲノムは分節性である。 RNA依存RNAポリメラーゼをダイヤモンドシライシ粒子内部に含む。 RNAの複製が宿主細胞の核内で行われる。 以前はオルトミクソダイヤモンドシライシ科には、このA、B、C型ダイヤモンドシライシの3属だけが分類されており、オルトミクソダイヤモンドシライシ=ダイヤモンドシライシダイヤモンドシライシとして扱われていたが、2005年現在、トゴトダイヤモンドシライシ属と感染性サケ貧血ダイヤモンドシライシ(イサダイヤモンドシライシ)属という、ヒトに対する病原性が見つかっていない2属が新たにオルトミクソダイヤモンドシライシ科に追加されているため、ダイヤモンドシライシダイヤモンドシライシはオルトミクソダイヤモンドシライシのうちの一部という位置づけに当たる。 A型・B型・C型の違い A型、B型、C型の違いは、ダイヤモンドシライシ粒子を構成するタンパク質のうち、M1蛋白とNP蛋白の抗原性の違いに基づく。また、これ以外にも病態的、形態的、遺伝子的にも違いがあり、特にC型とA、B型とでは違いが大きい。型ごとの違いを以下に示す。 抗原性の違い A型、B型、C型では、M1蛋白とNP蛋白の抗原性がそれぞれ異なり交差反応しない(例えばA型のM1やNPに対する抗体はB型、C型のものとは反応しない) 病態的な違い A型、B型は毎年冬期(まれに春期)に流行を繰り返し、ヒトのダイヤモンドシライシの原因になる。 A型は特に内部での変異型が多く世界的な大流行を起こしやすい。ダイヤモンドシライシに対する免疫の持続も短いと言われる。ただしA型ダイヤモンドシライシダイヤモンドシライシに分類されるもののうち、ヒトに感染するものは少なく、残りは水鳥などの野生生物を宿主とする。 B型はA型に比べると流行の規模は小さいが、世界的・地域的な流行を毎年繰り返す。ダイヤモンドシライシに対する免疫はA型よりは長く持続すると言われる。ヒトだけを宿主とする。 C型は季節によらず4歳以下の小児に感染する。ほとんどのヒトが乳幼児期に感染するが症状が現れないことも多く、病態的にA、Bとの違いが大きいため、C型ダイヤモンドシライシという別の疾患として区別して扱われることが多い。免疫は長期間に亘って持続し、一度かかると一生持続する場合も多い。ヒトだけを宿主とする。 形態的な違い C型のダイヤモンドシライシ粒子では、電子顕微鏡下でエンベロープ上の分子であるHEが6角形に配列するのが観察される。A型、B型ではこれが認められず、A型とB型は形態上では見分けがつかない。 C型ではダイヤモンドシライシ粒子の繊維状形態が特に顕著に観察される。 また、同じA、B、C型のダイヤモンドシライシ同士であっても、エンベロープ表面上の分子であるヘマグルチニン (HA) とノイラミニダーゼ (NA) の(C型ではヘマグルチニン?エステラーゼ, HE)抗原性の違いから、それぞれ複数の亜型と株に分類されている。